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治療のこと

Q. 自覚症状がない時は、お薬を止めても大丈夫ですか?

A. 中止できるお薬もありますが、急に止めると、その反動で症状が悪化する場合もあります。
いずれのお薬も自己判断で止めたりはせず、必ず主治医にご相談ください。

多発性硬化症(MS)の治療には、
(1)症状が治まっている寛解期に、MSの再発を防いで進行を抑えるために行われる「疾患修飾療法(DMT)」
(2)寛解期になっても残ってしまった症状を和らげるために行われる「対症療法」
(3)DMTや対症療法で使用するお薬の副作用を抑えるために行われる治療
など、大きく3つあります。

このうち、症状がなくなることで中止できるのは、(2)の対症療法です。痛みやしびれ感、排尿障害、つっぱりなどの症状が改善すれば、これらの症状に対して出されていたお薬は止めることが期待できますし、(3)の対症療法の副作用を抑えるために出されていたお薬も止めることが期待できます。

ただし、(2)の対症療法で使用するお薬の中には、急に服用を止めると、その反動で症状が悪化する可能性(離脱症候群)もあるため1)、服用を止める場合は少しずつ量を減らすなどの対応が必要になることがあります。しかし、いずれのお薬も自己判断で止めたりはせず、必ず主治医にご相談ください。

MSの再発を防いで進行を抑える治療(DMT)は、“長期的な視点”をもって続ける

一方、(1)のDMTという治療は、今ある症状を改善するための治療ではなく、MSの再発を防いで進行を抑えるなど、患者さんの将来のことを考えて行われる治療です。したがって、副作用があって続けることが難しいなどの事情がなければ、基本的にはDMTのお薬を止めることは考えないほうが良いでしょう。脳を含む中枢神経系を長期にわたって良い状態に保つためには、DMTのお薬をきちんと続けることが大切です。「今、調子が良いから、薬はもう止めてもいいや…」と考えるのではなく、“長期的な視点”をもって治療に取り組み、お薬を続けていただきたいと思います。

私のこれまでの診療経験からお話ししますと、お薬をきちんと続けられない患者さんには、「ご自身がMSである」という事実を受け入れられていない方が多い印象があります。「自分はMSのはずがない!だから薬は飲みたくない。必要もない!」ということで、治療を拒まれる方も一部いらっしゃいます。しかし、逆にいえば、病気であることをきちんと受け入れることができれば、治療を続けられる方が多い印象もあります。

まずは勇気をもって、ご自身の病気と向き合うことが大切です。それができれば、おのずと前向きな気持ちで治療に取り組めるのではないかと思います。

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1) 日本神経学会 監修 『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017』医学書院 p267 2017年

【回答】東北医科薬科大学 医学部 老年神経内科学 教授 中島  一郎 先生