Q. 現在、お薬で治療中なのですが、ワクチンを接種しても大丈夫ですか?
A. 使用しているお薬の種類によっては、ワクチン接種が不可能、または注意が必要な場合があります。
基本的に、麻疹や風疹などの「生ワクチン」の接種は中止、または避けたほうが良いですが、インフルエンザワクチンは接種しても良いでしょう。
「感染症」は、多発性硬化症(MS)の発症や再燃のリスクとなることから、MS患者さんの健康維持や再発予防のためにも、基本的にはワクチンは接種しても良いと考えています1)。
しかし、MSの再発を防いで進行を抑えるお薬の中には、服用により免疫力が低下する可能性のあるものもあります。これらのお薬を服用している間は、ワクチン接種による感染症の発現リスクを考慮して、麻疹・風疹・水ぼうそう・おたふくかぜなどの「生ワクチン」の接種は中止、または避けたほうが良いと考えられます1)。
また、過去に水ぼうそうや帯状疱疹にかかったことがない方、または、これらの予防接種を受けたことがない方は、MSのお薬の服用を開始する前にワクチンの接種が勧められることもあります1)。
ワクチン接種に関する詳細は、主治医にご相談ください。

インフルエンザ予防のためにも、手洗い・うがい、そしてワクチン接種も積極的に検討
一方、「不活化ワクチン」に関しては、MSのお薬を使用していても、接種は問題ないと私は考えています。特に季節性インフルエンザに関しては、感染とMS再発との関連性が示唆されているため、インフルエンザワクチンは接種したほうが良いと考えています1)。日頃から手洗い・うがいをしっかり行うとともに、ワクチン接種も積極的に検討されると良いでしょう。
1) 日本神経学会 監修 『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017』医学書院 p122-123 2017年
【回答】東北医科薬科大学 医学部 老年神経内科学 教授 中島 一郎 先生