Q. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した場合、
MSの治療にはどのような影響があるのでしょうか?
A. MSの治療を中断すると、MSが悪化するリスクがありますので、
COVID-19に感染しても基本的にはMS治療を継続することが求められます。
MS治療薬の服用と、COVID-19の重症化リスク
多発性硬化症(MS)のお薬には、免疫の働きを抑えたり調節したりする作用があるので1)、MS治療中にCOVID-19に感染すると重症化するのではないかと心配される患者さんもいらっしゃるかと思います。
その一方で、MSの治療を中断したり延期したりすることで、MSが悪化するリスクもあるため、慎重な判断が求められます1)。
COVID-19に感染し重篤な状態となった場合には、主治医の判断のもと、MS治療の中止が考慮されますが2)、それ以外の場合は、基本的にはMS治療をそのまま継続することが求められています1)。いずれの場合も、必ず主治医に相談して指示を仰いでください。
より注意が必要なMS患者さん
MSというだけでCOVID-19に感染しやすい、または、重症化や命に関わるリスクが上昇するということはありませんが、下記に該当する方は、感染した場合に重症化のリスクが上昇することが指摘されていますのでご注意ください(2020年10月23日時点)1)。
①進行型MSの方
②60歳以上の方
③男性
④身体障害度が高い方〔例:EDSS(総合障害度スケール)6.0以上の方〕(EDSS 6.0:100mの距離を歩くのに片手杖が必要な状態)
⑤肥満、糖尿病、心疾患、肺疾患をお持ちの方
基本的な対策
まずはCOVID-19に感染しないよう、屋内でも屋外でも社会的距離(最低1.5m)を確保する、公共の場ではマスクを着用する、混雑した場所(特に屋内)は避ける、手指を清潔に保つ、インフルエンザの予防接種を受けるなど、一般的な感染対策はしっかり行いましょう1)。
なお、公共交通機関での移動や待合室での感染リスクを懸念して通院をためらっている場合は、病状が安定していればオンライン診療や電話相談など、対面診察以外の方法を選択されるのも良いかと思いますので主治医にご相談ください。
COVID-19 に関しては不明な点も多く、世界各国で様々なデータが現在進行形で集積されています。今後の研究や新たな報告、状況の変化などによって、これまでの方針が見直される可能性もありますので、厚生労働省や日本神経学会、日本神経免疫学会のホームページなどで最新情報をこまめにチェックしていただけたらと思います。
1) 日本神経免疫学会 ホームページ 「新型コロナウイルス感染症に関する多発性硬化症患者さんへの助言(2020年10月23日改訂版)」
2020年11月4日掲載
(http://www.neuroimmunology.jp/jpn/news/MSIF_COVID19_ver4%20Japanese%20translation%20by%20Dr%20Miyazaki.pdf)
2) 日本神経免疫学会 ホームページ 「神経疾患の患者さん、介護者、担当医への新型コロナウイルス感染症に対するガイド」
2020年4月6日掲載
(http://www.neuroimmunology.jp/jpn/news/British_Association_of_Neurologistsguide_KFfinal.pdf)
【回答】東北医科薬科大学 医学部 老年神経内科学 教授 中島 一郎 先生