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『WEB市民公開講座』記録集のご案内
情報を集めて活かして伝えよう ~自分らしさを表現するために~

2022年11月12日 (土) 開催

講演1 ヘルスリテラシーを高めよう!-MSとより良く生きるために-

藤井 ちひろ 先生

ヘルスリテラシー(注)を高めるためには、適切な情報を収集する力、情報を正しく読み解く力、情報を活用して意思決定につなげる力が必要です。

意思決定の際には、エビデンス(根拠)が大事であるといわれてきましたが、根拠の有無だけで意思決定ができるわけではなく、本人の価値観や生活環境などを考えることが重要になります。そうした視点から、最近では、EBM(Evidence Based Medicine:臨床試験という根拠に基づく医療)とNBM(Narrative Based Medicine:患者さん側の語りに基づく医療)の両方を組み合わせて意思決定をしていく共有意思決定(Shared Decision Making)が提唱されています。

特にMSの場合には、患者さんの数が少ないこともあり、他の疾患と比べて十分なエビデンスが得られにくく、ガイドラインや標準治療が当てはまらない患者さんも少ないながら一定の割合でおられます。治療方針に絶対的な正解がないこうした疾患においては、患者さんと医療従事者とがコミュニケーションを取りながら情報・目標・責任を共有して意思決定していくことが特に重要です。患者さんから発信していただくだけでなく、医療従事者も患者さんが発信しやすいような環境を整え、コミュニケーション能力を鍛えて、患者さんと共にヘルスリテラシーを高めていかねばと考えています。

(注)「健康情報を入手、理解し、活用するための知識、意欲、能力であって、それによって日常生活におけるヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーションについて判断したり意思決定をしたりして、生涯、一生を通じて生活の質を維持・向上することができるもの」として定義[1]される。

Q&A

Q インターネットの情報では、MSには治療が必要といわれていますが、主治医からは経過観察と言われて無治療の状況です。医師の方針とインターネットの情報に食い違いがある際は何を信じ、どのようにしたらよいでしょうか。

A 初発後に疾患活動性を評価するために一定期間経過観察を行う場合もありますし、経過観察のみでも、長い間再発や障害進行の無い患者さんが少ないながらいらっしゃいます。経過観察とする理由はいろいろだと思いますので、主治医の先生がなぜそのような方針をとっているのかを、ご自身の不安なお気持ちとともに聞いてみてはいかがでしょうか。

Q 医師から勧められている治療に不安を感じて躊躇しているのですが、どのようにコミュニケーションをとったらいいでしょうか。

A 一見話しづらい先生もいらっしゃるかもしれませんが、医師としては患者さんが何を不安に思っているのかを知りたいものだと思います。患者さんにとっては勇気がいることかもしれませんが、患者さんの方から、不安に思っていることをお伝えいただけると、大変助かります。患者さんの不安に対しては、それを解決できるよう一緒に考えていければと思います。

講演中に紹介された参考になる情報サイトなど

講演2 医療・福祉の情報を活用するために知っておきたいこと

市原 章子 氏

MS患者さんを支える仕組みとしては、難病相談支援センター、保健所、ピアサポーター(患者会、ピアコミュニティ等)、病院、ハローワークといった機関があります。そのほかにご病気やご状態によるところはありますが、福祉サービスとして、ヘルパーやリハビリテーションの利用、自宅への手すりの設置など、生活すること自体をサポートするための支援もあります。

こうした支援を組み合わせて活用することになりますが、「誰に何を相談したらよいか分からない」というときには、まずは皆さんと一番接点が多い病院の主治医や看護師、ソーシャルワーカーに相談されるのがよいと思います。地域の難病相談支援センターや保健所にも専門的な研修を受けた方が配置されていますし、同じ体験をしてきた方に聞いてほしいということならば、ピアサポーターに話してみるのもいいでしょう。皆さんの悩みを伺った医療従事者や担当者が、お一人お一人の状況に合わせて調整し、例えば就労の悩みであればハローワークをはじめとする専門機関と連携するなどしてチームで支援にあたります。

「病気のことを会社に話すかどうか迷っている」「病状に変化があって、生活面、仕事面を総合して考えていかなければならなくなった」など、どのようなことでも、一人で抱えず、ご自身が相談しやすいところに相談してみてください。

Q&A

Q 現在、日常生活に大きな支障はないのですが、目の疲れを感じるようになってきています。現在の仕事先に病気のことを伝えていないこともあり、難病患者への理解が厚い会社への転職も検討しています。長く仕事を続けるためによいアドバイスがあれば教えてください。

A お一人で決めてしまわないことが大切です。今まで勤めてこられた実績や積み上げてきたもの、これからのライフイベントなどをよく考えたうえで、理解のある会社に転職した方がいいのか、それとも、現在お勤めの会社で理解が得られるように専門家の力を借りながら話をしていくべきなのか、専門家を交えてチームで話し合いながら、最善の選択肢を探っていきましょう。

講演中に紹介された参考になる情報サイトなど

難病情報センター(公益財団法人難病医学研究財団)
https://www.nanbyou.or.jp/

患者会およびピアサポート活動、患者の社会参加を推進する活動など

事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン|治療と仕事の両立支援ナビ(厚生労働省)
https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/guideline/

『WEB市民公開講座』記録集のPDF版はこちら

  1. Sørensen K, et al. BMC Public Health. 2012; 12: 80.